改めて。食べるについて。

食べるって大事。

梅雨なのに春のこと

お菓子の製造をやってみたいなと思って

いてもたっても居られなくなったのは

28歳という微妙な年頃だった

 

お菓子と言っても

ごはんみたいに食べられる

デザートとかスイーツというより

もう少し

日常的な感じの

ほんの少しだけ

宙に浮くことが出来る

お食事みたいなもの

 

あと

誰かにちょっくら

あげられるもの

 

いくつかのお店をまわって

いくつかのお菓子を買って

どれが美味しいか

好きな人に食べてもらった

 

これがダントツだと

言われたので

んじゃ作れるようになろうと

ピカソルで働くことにした

 

当時の代官山で店長をしていたのは

ののさんと言って

とても美しくコロコロと良く笑う人

センスも話も奥行きがあって

纏う空気は華やかなのに気さく

 

製造をしていたのは

さとうさんと言って

とても繊細で可愛らしい人

お菓子を作る時の丁寧な眼差しや

普通に食材に話しかける姿

 

その頃私に出来る事と言ったら

袋にスタンプを押すこと

出来上がったお菓子を包んで並べること

試食を食べて美味しくてニコニコすること

くらい

 

けれど全部全部

誇らしくて楽しかった

 

彼女たちはしばらくして

新しい道を進み始めた

 

それから

随分と時間が流れ

私はまだここ

 

ふと

この日々はなんだ?

と思った

 

どんなに

あの頃を再現しようとしても

もう絶対にあの頃には戻れないのに

 

あんなに楽しかったからと

なんとなく私は

あの頃にしがみついている気がする

 

はじまりはいつもワクワクして

だけどそれを持続することは

案外忍耐が必要なものだな

とじんじんと

私の頭の上に雪が積もる

 

ののさんとさとうさんと

春真っ盛りだった私

 

それから

夏も過ぎて

秋が過ぎて

ただ今冬真っ盛り

 

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ある日のボウルの中は

なんだか宇宙の景色のようで

私はおもわず食材に向けて

綺麗だねー

と声をかけていた

そして感動しているわ私

と1人じんじんしながら

お菓子にした

 

春なんてくる

だけど

別の春しかもうこない

 

あの春を知っているが

とても誇らしい

 

横殴りの雨の中

 

ののさんとさとうさんと

大笑いしたお店でのことを

思い出しながら

 

彼女たちに食べさせたいのは

はてどんなお菓子かな?

とふと。