改めて。食べるについて。

食べるって大事。

怪獣とおにぎり

そんなにお客さんのいない映画館には

パパと妹と私

 

前の椅子と椅子の隙間から

おっかなびっくり彼を見上げたのが

最初の記憶だ

 

下敷きを買ってもらって

帰ってきて

次の日学校で自慢した

 

ガチャガチャをパパは

たまに仕事帰りに

買ってきてくれて

そこには手のひらに乗るくらいの彼や

彼の敵や仲間

 

それを机に丁寧に並べて

眺めながら宿題をした

 

彼の名前はゴジラと言って

有名な怪獣だ

 

私は今も彼が映画館で活躍すると聞けば

公開初日に会いにいく

 

そしていつもぼろぼろ泣いてしまう

 

彼に会えるととても嬉しくて

今回もにこにこしながら

ぼろぼろ泣いていた

 

彼がもしかして本当に居るのではと

考えて眠れなかった夜が

昔々にある

 

なんでかお腹が空いて

わがままを言って

おにぎりを握ってもらった

 

真夜中におにぎりを食べながら

私はぼろぼろ泣いた

 

ゴジラにみんなが

取られたらどうしようと思って

ぼろぼろ泣いたら

家族はゲラゲラ笑っていた

 

あの頃はもう訪れない

 

私は子供で家族がいて

食卓を囲んでいる

 

いただきますと言って食べ始める

 

テレビに気を取られるては怒られ

野菜を残しては怒られ

 

ゴジラは私をあの頃に

連れて行ってくれる

 

いつか自分が死んでしまうことなんかより

この日々の中起きている楽しい事

大切な人との出会いを

忘れてしまう方が惜しいと思って

ぼろぼろ泣いてた真夜中に

 

泣いて口の中は唾液でいっぱい

おにぎりはあったかくて

それでもっと涙が込み上げた

 

口の中で

いつもよりぼろぼろになるご飯粒

それから

ぽんぽんと頭を撫でるパパの手と

正面から私を眺めるママの香り

なんでかつられて泣いて

一緒におにぎりを食べる妹の

ゴジラみたいな泣きっぷりと食いっぷり

 

もう明日はすぐそこなのに

いつまでも続くみたいに

怖かった夜の乗り越え方を

丁寧に教わった

 

胃袋がここにあるのかと知るみたいに

あったかくなったお腹で

やっと眠たくなったのに

すぐに

起きなさい!と声がして

朝が来たと喜びながら

食卓に座る

 

トーストとスクランブルエッグ

焦がしたベーコン

それからコーヒー

朝食に主人公の少女が

お母さんに作ってあげていたもの

 

ゴジラなんかより怖かったのは

毎朝私の傍らで

ご飯だろうがパンだろうが

牛乳をガブガブと妹が飲んでいたこと